楽しい夏祭り
夏が近づいて来ましたので、小学校時代の出来事を紹介します。
当時、夏祭りはとても楽しい行事の一つでした。
ちょうど3年生の夏の日のことです。
私は500円札(当時はお札でした)のお小遣いをもらい、意気揚々と神社の夏祭り会場へと向かっていきました。
そこには、様々なお店が参道の両サイドに並んでいて、何を買おうかとウキウキ気分で歩いていました。
不思議なレンズ付きの箱?
左右のお店を見ながら歩いていると、向こうの方で、男の子たちが大勢集まって何やら一生懸命、おじさんの話を聞いているところが目に入りました。
何をしているのだろうと、私も気になって立ち止まって見ていると、そのおじさんは、目の前の小学生の男の子に四角形の箱のようなものを渡していました。
どうやら、この箱の両サイドに特殊なレンズがはめ込んであって、そこから覗くと、モノが透けて見えるとのこと。
卵の中が透けて見える!
おじさんは、ポケットからニワトリの卵を取り出し、その男の子の目の前にかざし、先ほどの箱から覗くように言いました。
すると、あら不思議、男の子は、「卵の中の黄身が見える!」と、のたまうではないですか。
おじさんはおじさんで、何やらニヤニヤしながら四角い箱から周りを覗いているものですから、そこに集まった子供たちは、みんな言葉には出しませんが、この四角い箱から見ると、着ている服も透けて見えるんだと想像してしまったのです。
不思議なレンズ付きの箱の争奪戦が始まる!
そうなると大変です。
おじさんは、「数はあまりないが1つ500円で売ってあげるから、欲しい人は1列に並んで!」と言うではありませんか。
子供たちは、我先にと列に並ぶものですから、私も遅れまいと、お小遣いの全財産である500円札を握りしめて前の子供の後に並び、なんとか魔法の四角い箱を手にすることができました。
不思議な箱で見えたものとは!
心の中でガッツポーズをしながら、早速、四角い箱のレンズのようなものから向こうを覗くと、なんということでしょうか。景色が二重になって見えるではないですか!
どうも、特殊なレンズと称していたところには、鳥の羽のようなものが付いていて、そこから覗くと景色が二重になって見えるようでした。
そのため、卵を横からではなくて正面から見ると、卵が二重になって見えることから、黄身が見えたと錯覚したのではないかと思います。
唖然としながら、フッと我に返ると、私の周りの子供たちも、「だまされた!」という顔をしていましたが、すでに、おじさんは、何食わぬ顔で撤収作業中でして、ほどなく、参道から去っていくのでありました。
悲しい夏祭りに終わる
結局、私はわけのわからない四角い箱に全財産をつぎ込んでしまったということで、楽しいお祭りだというのに、ほかに何も買うことができず、家路へ急ぐという、苦い、悲しい経験をしてしまいました。
子供をだましてお金儲けをする大人がいることを初めて知った瞬間でした。